- 漠然と外交に興味を持っていたものの、初めて読んだ一冊。
全体に渡って、いかに体を張って命をかけて(!)外交に望んでいるかがひしひしと伝わってきた。
興味深かったのは、外務省官僚として、政治家に対してどういう態度で接し、政治家の言葉の裏をどう読んでどういう態度を取ってきたかの部分。こういうところは書いてくれたものを読まなければ一般国民にはわからない。
インテリジェンスに関わる過程で鍛えた記憶力での再現なのか、それとももともと小説家としての会話構成力の素質が備わっているのか、人物のやり取り部分(著者と政治家、そして検事)の会話部分はかなり読ませる。とても引き込まれた。これがこの本の醍醐味だと思った。
ただ、一部の官僚の言葉としてでてくる「国民には本当の識字率なし」の部分は、アンタがた外務省官僚が外交やってる間にこちら一般国民は違う仕事をやってるんだから当然じゃないの?と思う(もちろん有権者としてメディアからわかる範囲でできるだけ賢明な判断をする努力は大事だけど)。それに、外交のような逐一国民に知らせずに動向を知らせずにプロとしての信頼感を元に進めて行く仕事になればそうなるのはなお当たり前のことだ。ただ、それによって生じる官僚と一般国民の間の認識というのはなかなか埋められないから、むずかしいのだろうけど。(だいたい、この本で語られている佐藤氏のようなライフスタイルでは、家族だってまともに持てやしない)
検察が官僚や政治家を起訴するためのハードルが、マスコミが騒ぐものさしまで低くなっているというところがあるが、これは最近医療事故関係の裁判についてある医師が書いた批判にも当てはまることだ。多くの人々が関わるゆえに一般人が監視・批判しなければならない物事でも、一方ではプロにしかわからないことは多い。こういう場合、一般人vs専門家で対立するしか道はないのだろうか?と考えてしまう。 - 佐藤氏は本書の中で「鈴木宗男議員の致命的な欠点は、その嫉妬心の希薄さにあった・・・」としている。
いわく、妬みや嫉みの感情が薄い人は、他人の悪口を滅多に口にしない反面、他人の嫉妬心にも鈍感である・・・・と。
なるほどねぇ。これは腑に落ちた。
これは佐藤氏自身の自己分析でもあるのかな・・・。
国益に対する見解は意見の分かれるところでしょうし、わたし自身も明確な立場を持ちません。
ただこの嫉妬心に関する見立てには、思わず唸ってしまいました。
そういえば昔「争いごとなんてのは、結局すべて嫉妬だよ」と家のヨメが喝破していました。それを言っちゃおしまいよと思いつつ、真理をつかれたようで反論できず・・・
男はね、自分が嫉妬深いだなんてゼッタイ認めたくない生き物なんですよ。
・・・で、何の話ですっけ?
- 最近国家間の情報戦に興味があるので遅ればせながらこの本を手にとってみたところ、非常に勉強になった。対ロシア戦略および北方領土の日本側からの解釈・位置づけ、そして最近また話題になっている所謂国策捜査について平易に解説されているので日頃の勉強不足を補うことができる。肝心の情報戦については非常に為になる教訓が一つ:情報屋の世界では信用が第一であって、これを裏切った者は二度とその世界に再び受け入れられない、ということ。この線を守ることが、著者をして1年以上に及ぶ拘置所生活を決断させる一つの理由になったとある。金融で言うところの"My word is my bond"に通じる約束なのかなと感じた。或いは、リスクの伴う中でスピード感のある活動を支えるのはどの世界でも信頼できる仲間である、のであろう。
- これだけの能力ある外交官がいたことに驚愕した。
追い詰められた人間の凄さなのだろうか。
たとえ今後仮に訴訟で負けたとしても佐藤氏はすでに『戦い』に勝利しているように思う。
佐藤氏のような役人は他にもいるのだろうか。
だとしたら日本という国にもまだまだ期待が持てるのだが・・
それにしても鈴木宗男氏や佐藤優氏に対する国策捜査の裏にアメリカ政府の影を感じるのは私だけだろうか・・? - 検事とのやりとり、情報戦線がとくにおもしろい!同じく、国家の罠にはまった植草一秀「知られざる真実」もおすすめです。